
【イラストレーター・さけハラス】写真加工×イラストのエキスパート 旅するイラストレーター
彼は旅するイラストレーター。全国を歩き回り、そこで取材し撮影した写真を加工して、作品に仕上げていく。2019年5月に出版した「写真加工でつくる風景イラスト 神技作画シリーズ」では、ゼロから風景を生み出すのではなく、1枚の写真から誰でも短時間で美しい風景イラストを作り出す技法を紹介し、多くの人が、その技法に習いtwitterなどで作品をアップした。写真を加工してイラストにする。このような技法を大々的にやっていると公言しているイラストレーターは少なくない。
小さい頃から落書きはよくしていた。彼が本格的にイラストレーターとして活動を決めたのは社会人を経験してからだ。就職した会社がデザイン会社。飲食店のロゴマークなどのイラストを描く事が多くなり、そこから楽しみを覚えたという。仕事以外でも2次創作などを趣味ではじめていき、次第にイラストレーターとしての道を目指すようになっていったという。

創作活動をはじめた頃は、一から描かなきゃいけないという意識でやっていた。そこから現在の技法に辿り着くが、当初は写真加工で背景にすることを公言することに遠慮があった。写真を使う人は甘えという批判的な声などがあったようだ。しかし、日常の風景をリアルに描写する作品が多い自分としては、写真を使っても良いのではと思ってきた。 変なうしろめたさを感じて作品の制作スピードが遅くなるのがもったいない。どのようなシチュエーションを選び、その素材をいかに収集し、作品に仕上げて魅せる。それが、さけハラスの世界観なのだと。

そんな彼の世界観が詰まった、旅物語をテーマにしたイラストコミック集「私は今、旅をしています」が2019年11月に出版された。謎の存在(?)からの謎の指令(!?)を受け、何故だか各地を旅する少女・明美さけ子。さけハラスさんが自ら足を運んで選び描いた軌跡に、1人の少女が辿る事で、一つ一つの場所が聖地に変わっていく、そう感じさせてくれる不思議な作品となっている。

2019年は、さけハラスさんにとって大きな変化があった年と言えるだろう。技法本、作品集を出したほかに、旅をしてきた都道府県毎に作品を並べていく個展を開催。単に作品展示とグッズの販売だけでなく、お客様から指令書を描いてもらい、指定の地域に彼が赴いて作品にするユニークなキャンペーンも行った。まさに自身の確固たる確立と今後への強い決意を表した1年だったと感じさせてくれる。
まだまだ旅する所も描く事もあり、今後の活動に、ますます目が離せないさけハラスさん。色々と質問をしてみた。
Q1. そもそも旅して描く事をはじめようと思ったきっかけは何だったのですか?
A. それまで制作していた「写実的な風景と女の子の一枚絵」をどう活用するのかという事を考えていました。キャラクターに実在する土地を旅させることにより、作家として自分自身の作品を好きでいてくれる方に加えて、別の方向から応援してくれる方が増えるのではないかなと思ったためです。また、SNSとの相性も良い企画だなと思いました。あと、単純にいろんな土地に出かける理由が欲しかったのもあります(笑)
Q2. 47都道府県を旅して作品にしていくプロジェクト、、、楽しそうに感じる反面、大変かと思います(汗)現在どのくらい進んでいるのでしょうか?
A. 現在11県です。ただ、1県に対して数か所ほどしかロケを行う事が出来ておらず、とてもその県の魅力を伝えきれているとは思えないため、この先応援して下さる方がいる限り2週目3週目と続けていけたら良いなと考えております。1県に対しじっくりと時間を割けなかったのも、企画段階で “都道府県を埋めていく”というキャッチーさを優先した部分も強いので、企画自体もブラッシュアップしながら進めていけると良いなと思います。
Q3. 2019年は勝手ながら、さけハラスさんにとって非常に変化のあった年だったのかなぁと感じましたが、いかがでしょうか?
A. やはり、書籍が出版された事は大きな変化につながったと思います。今までの活動が認められることは大きな自信に繋がりますし、今後の作家活動の方向性を考えるきっかけにもなりました。
Q4. 昨年、出版された「写真加工でつくる風景イラスト 神技作画シリーズ」では、多くの方が、それに倣って作品をtwitterなどにアップされていましたね。
A. 写真が手元にあれば手軽に挑戦できますし、キャラクターを描くは好きだけど背景は敬遠していたという方も多いと思うので、そういう方に実際に活用して頂けたのかなと感じています。 また、私自身写真を使って制作しているという事を公言するようにして、こういった書籍も出して頂いたことにより、写真を使う事へのネガティブなイメージが少しは変えられたのであれば良いなと思います。
Q5. やはり様々な場所を旅する中で、作品にする素材(スポット)選びは、さけハラスさんの中で重要な要素だと思いますが、一番に大事にしている点などあれば教えてください。
A. 誰もが知っている人気スポットはなるべく外すことです。既にそのような場面を描いた優れた作品は世の中に溢れていて勝ち目がないし、画像検索などで直ぐにヒットするような場所だとわざわざその土地を訪れる意味合いが少し弱くなってしまうためです。また、マイナーなスポットであれば、その土地に詳しい方がSNSで反応してくれたりもするので、その交流も含めてやっと完成される作品作りを目指しています。この先もし旅行代理店さんや地域コラボすることがあれば、有名なスポットはその際に描くことになると思うので、その時のために敢えて外しているという理由もあります(お仕事のご相談お待ちしております。笑)
Q6. 最後にさけハラスさんにとって「絵を描く」とは何でしょうか?
A. 何かの目標を達成するためのツールのひとつです(というと冷たい印象になるかもしれませんが…)
例えば、授業中の落書きやSNSにアップするイラストとかでも、人によってはそれで「誰かを笑わせたい」「共感してほしい」という感情や理由がある事が多いと思います。 自分にとっては、その目標を達成するために一番の優秀なツールが「絵を描く」ことです。
さけハラスさん、ご質問にお答えいただきありがとうございました。
さけハラス
旅するイラストレーターとして活動。2019年5月「写真加工でつくる風景イラスト 神技作画シリーズ」。同年11月には、旅物語をテーマにしたイラストコミック集「私は今、旅をしています」を出版。その技法と彼が選び抜いた素材を聖地へと創り変える世界にSNSを中心に反響が相次ぐ。それでも彼の旅はまだまだ続く。